上越地域のお住まい探し株式会社 くびき開発

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山行体験記 火打シャルマンロードの誘惑 


調査隊
隊長 青田 浩
隊員 伊藤 信行
隊員 朝比奈 信男
隊員 市川 恵美子
隊員 丸山 隆志(執筆)

< 10月11日(土) 天気 晴 >

 

朝早く

 

朝2時 目覚まし時計がけたたましく鳴り、起床。おにぎりを6ヶも作ってもらい、3時に自宅を出発する。
途中伊藤隊員と合流し青田隊長宅へ迎えに。妙高インターにて市川隊員と合流、笹ヶ峰牧場にて朝比奈隊員と合流して全員がそろう。
まだ薄暗い5時前、火打山登山口には既に100台数余の車が集まっており、好き者が大勢いるものだと感心する。

 

調査隊員全員が初の試み

 

小生は、今年4月27日にスキーにて火打山から笹倉温泉まで滑っているので火打山は2度目だが、徒歩でしかも空沢山~放山~シャルマン山頂へは初めてである。調査隊員全員が初の試みであり、このコースは誰も通ったことの無い未知のルートだろう。
5時25分に登山口を出発する。まだヘッドランプが必要である。各隊員25㎏もの荷物を背負っての調査隊である。
こんなに重い荷物で、果たしてシャルマンまで辿り着けるだろうか?少々不安である。

 

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火打山からの調査ルートは、ずっと尾根コースの為、途中での水の補給は不可能と思われ、各人約7リットルの水を準備する。
こんなに沢山の水が必要なのだろうか?青田隊長は、軽く淡々と指示する。重いけど仕方がない。

 

さぁ!目指すはシャルマン!

 

青田隊長の号令のもと、いざ元気に出発する。目指すはシャルマン!
出発から約1時間、比較的なだらかなブナ林が続く道を登る。途中ヘッドランプのスイッチを切り紅葉を楽しみながら進む。
後から来た登山者がどんどん追い抜いて行く。見るとみんな小さなリュックで羨ましい。調査隊は25㎏の重量である。

 

簡単な朝食

 

6時30分、黒沢川口(十二曲がり)で一休みする。簡単な朝食をとり、火打山までの最大の難所に差し掛かり、きつい登り坂が続く。調査隊は、隊長以下みな厳しい顔つきで一歩一歩あえぎながら進む。
十二曲がりを登り切ったところで急に視界が開ける。大変良い眺めだ。
でも、まだまだその後も1mもあろうか大きな岩石の間を登るきつい坂が続く。

 

小生にアクシデント

 

幾分なだらかなコースになった時、小生にアクシデントが!左腿に筋肉痛、 後ろを歩いていた青田体長が異変に気付き、すぐさま駆け寄り、小生の荷物を他の隊員に手分けして持てるだけ持つよう指示する。おかげで荷物は半減するが、 しかし他の隊員はたまったものではない!申し訳なく思いながら緊急治療を。
サロメチールを吹きかけ市川隊員のサポーターを太腿に巻きつけ出発する。

 

富士見平へ到着

 

荷物が半減したお陰か?サポーターの効き目か?相当歩くのが楽になる。ようやく富士見平へ到着する。
他の登山者が、いきなり富士山が見えるぞ!と・・・。
黒姫山頂の彼方にポッカリと富士山が見える。ああ、それで富士見平なのか。
正面を見上げると素晴らしい火打山の全容と高谷池ヒュッテが目の前に見える。
いよいよ火打山に登って来たことを認識する。ここから高谷池ヒュッテまでは緩やかな下り坂、今までと比べ、バカ楽なコースに変わる。

 

高谷池ヒュッテに到着

 

火打山の裾野の紅葉は本当に素晴らしい。写真をパチリと撮りつつ9時15分、高谷池ヒュッテに到着する。
朝食か昼食か分からない食事をとり約30分ほど休憩する。
ここで高谷池の水を補給(約6リットル)、しかしこの水は生では飲めないと書いてある。
熱を加えないと駄目とのこと。確かに少々濁っているねえ。

 

高谷池~火打山頂

 

9時55分、高谷池ヒュッテを出発する。いよいよ火打山頂へアタックだ。高谷池をゆっくり迂回して火打山頂を望みながら進む。遠くに蟻の行列が続いている。
目を凝らして見ると人間の様だ!高谷池を過ぎると最後の登りになる。頑張ろう!!

 

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9合目辺りから日本海側の尾根が見え始める。目指すコースを探しながら登る。風がかなり出てきた。
今晩、明日の天候が心配される。最後の力を振り絞って頑張る。太腿も悲鳴をあげる。
ついに火打山頂へ!11時30分到着する。360度の視界だ!

火打山頂 最高峰の大パノラマ

 

最高峰の大パノラマだ!先ずは、空沢山~放山~シャルマンを眺望!シャルマンスキー場の山小屋がかすかに見える。
空沢山、放山の山頂が見える!素晴らしい絶景だ!!
ここで 一句  「 絶景や ああ絶景や 絶景や 」

 

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火打山頂は、人・人・人・・・よくもまあぁ、こんなに登山者の多いこと。約100人近くはいると思うほどの人の数だ。
みんな50歳以上の方のようだ。ここは若者のいない世界なのか?
白髪の方、禿の方々(小生も少々禿げの部類かなぁ?)でも、今日はヘルメットを被っているので少しは若く見えるかな?
ゆっくり休んでいる暇も無く隊長から準備をするようにと激!ヘルメットを被り腰にナタを下げ、普通の登山者の4~5倍はあろうかと思われる量のリュック。
軍手をつけた姿は、ゆっくりと絶景を眺めている他の人達から見たら一体何者だ、と思われそうな異様な出で立ちの我が調査隊である。

 

火打山頂~空沢山へ

 

これからが本番。いざ出陣。丁度12時だ!目指すは空沢山へ!
火打山頂から下山を開始、最初の数㎞は草木も短く、比較的楽しみながら?の進行である。

 

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しかし、小生は太腿と膝が痛むが我慢しながら。弱音は吐かない!
このままだと空沢山(ビバーク予定地)まで楽勝か。あわよくばもっと先までも?
とこれから待ち受ける苦難を見極められない調査隊。途中「分けめの池」を通過し、能生町・糸魚川市・名立町の分岐地点より進路を北西にとり尾根に従って進む。
分岐点より約1㎞地点に左右の断崖があって、人一人がやっと通過できる50~60㎝程の通路が。市川隊員ビビル!

 

「ツイン・ピーク」と命名

 

目の前にこの尾根の中で最も突き出ている場所へ。突起が2ヶあるヶ所なので、調査隊はここを「ツイン・ピーク」と命名する。

 

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まさに名のとおりだ!ツイン・ ピークにて小休憩の後15時出発。空沢山を目指す。ツイン・ピークから見る空沢山はすぐそこに見えるので17時頃までは行ける楽勝かと思われた。約1.5 ㎞の距離に思えるツイン・ピークから約500m地点でまたもや左右の断崖、巾50㎝程度か、一歩足を滑らせたら「一巻の終わり」の危険地域、またまた市川 隊員ビビル悲鳴の声。
そこから先へ小さな突起まで尾根に沿って「けもの道」。熊か鹿の道か?余り気持ちの良いものでない。
大声を張り上げて進む。小さな突起の頂上から見ると空沢山は500m位か?

 

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時は16時30分、このまま進めば30分位で空沢山へ到着出来そうである。ところがそこからが大変。
尾根沿いは赤ツルや密集した木々が邪魔をして全く進めず青田隊長は赤ツルの上を泳いでいるような格好で腹ばいで進もうとしたが足にツルが引っかかって、ついに断念する。
東側の沢ルートに変更、時は17時。転がるように滑りながら下山する。隊員全員後に続く。
だんだん薄暗くなって来た。時は17時半頃、これ以上の行動は無理と隊長が判断。これ以上の進行は危険なのでこの付近の平地を探してビバークする。周辺を探索。なんとなく良さそうな場所を選んでここに決定する。
隊長は野営の準備にかかるようにと指示。

 

空沢山手前でビバーク

 

草木を取り除きテントを張る。食事を作る。ヘッドライトを使用しての作業である。
他の隊員はみな慣れているものだと感心しながら、だだ一人ウロウロして草を取るだけの小生である。

 

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楽しい?夕食

 

作業がどうにか終了して夕食となった。高谷池で汲んできた少々濁った水でラーメンを作ったり、コーヒーを沸かしたり味噌汁を作ったり。特別な「におい」はないようである。
持参したおにぎりを食べ始めたが、あまり食欲が湧かない。あまりにも急激なこの一日、疲れ過ぎた為なのであろう。
朝5時半頃から午後5時半過ぎまでの、ほぼ12時間、重い荷物を背負って歩きっぱなしで、慣れない行動に相当バテてしまったのだろう。
隊長だけは、さすがに慣れた者、マイペースのようである。楽しい?夕食が終わり後片付けを行い、何もすることが無いので寝ることにした。でもまだ午後7時半なのだ。

 

隊長の高イビキ!(熊よけのイビキ・・・)

 

相当に疲れているのですぐにダウンと思いきや、そうはなかなか寝つかれない!
狭いテントの中、2人で寝ているが相手も寝つかれないようだ。他のテントでもガサガサと音が聞こえてくる。
寝つかれないのだろう。ただ一人さすが隊長だけは直ぐに高イビキである。しかも、しかもだ。
テントの外で寝袋のみで グーグーグー・・・・・・。
この男は「怪物」か?こちらは興奮の為か、明日の天候を心配してなのか、熊の襲来が心配なのか、目が冴える。
他の隊員も同様の様子だ。しかし、隊長だけは別な人間のようだ。相変われずの高イビキ!だが全くうるさいと感じない。
理由はこうだ。この付近は熊の巣と言われ、いつ熊が出てきても不思議でなく、この時ばかりはもっともっと大きな、出来るだけ大きなイビキをかいてくれ!熊もびっくりして逃げ出すようなイビキを朝までかき続けてくれ!と願つつ。
夕刻から吹き出した風はだんだんと強くなり、夜半頃からとうとう心配した雨が降り出して来た。
一時過ぎ、ガサガサ音がするので外に出て見ると、さすがの隊長も一人で簡易テントを張っている。
小生も手伝った。ここで初めて隊長はテントの中へ入ったのだ。
しかし、テントの中へ入ってしまうと隊長のイビキの音が小さくなる恐れがある。熊が出てくれば困るなぁーと思いながらウトウト・・・。

 

 

< 10月12日(日) 天気 雨 >

 

熊にやられないで全員生きていた

 

12日朝5時起床。そっと外をのぞいて見る。誰も熊にやられていないかなぁ?
全員生きていた。一安心。昨夜は暗くなって現地に入っていた為、周りの様子が分からなかった。
明るくなってから見ると目の前に大きく立ち上がる断崖!
昨日あのまま暗い尾根を進んでいたら…大変危険な場所であった。30mはあろうか?危ないところであった。
隊長は、もう朝食の準備をしている。まだ、小雨が降っている。天気予報によると今日一日中雨とのこと。
まいったなぁー・・・。皆で朝食を食べた。ラーメンとカロリーメイト、味噌汁、紅茶・・・全部同じ食器で食べるのだ!テントをたたみ出発の準備。

 

雨の中空沢山へ

 

雨の為、雨具を着ての旅立ち。少々遅くなったが、7時に出発する。先ずは空沢山へ向かう。
小生がまずラッセルだ。空沢まで凡そ数百メートルか?小高い尾根を見上げると、尾根の先がなんとなくスッキリとしているように見えたので、思い切って尾根に進路を変更して登り切る。と、そこは別世界だった。

 

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焼山からの裾野に広がる紅葉が素晴らしい。モミジの絨毯を敷き詰めたような、今まで見たこともない紅葉だ!!ワンダフル!
しばらく尾根沿いに進むと空沢山の手前で、またもやツル等の障害で尾根の進行を断念。トラバースするしかない。
伊藤隊員にラッセルを代わり、しばらくトラバースした後、思い切って沢を下ることに決定する。
下の方にマルサンダケカンバの大木が見える。が、時間がないので寄らないで進む。
あまり沢を進んだのでは危険と考え、方向を北西にとる。

 

GPSで軌道修正

 

春スキーで何度も来ている地域だ。小生の指示でどんどん進むが、伊藤隊員からどうもオカシイ。
このまま進んだら早川郷へ入ってしまうと指摘があった。GPSにて確認するとやはり進路が間違っていた。
予定ルートに戻ろうと移動したが30mはあろうか。大きな沢である。このような沢を2~3ヶ所も登ったら身体がヘトヘトになってしまい、遭難することがある!と驚かされて、方向を間違って指示した
小生はバツが悪く、暫く黙って小さくなって最後列を進む。

GPSによって、正しいと思われる方向に進路を修正したが、放山山頂までまだ2㎞以上はあろうか?
放山までのルートを尾根沿いに変更したが、これからが最悪の状況になってきた。赤ツルが凄い、木が密集している、笹竹が凄い、放山にかけて登りが続く。とてもじゃないが尾根は歩けるものではない。
おまけに熊のウンコが時々ある。互いに声を張り上げ、笛を鳴らし、時々爆竹を鳴らして進行。
疲れるのでラッセルを交替しながら進む。
時には時速300m位にまで落ち込んだ場所もあった。トラバースしたり沢を下ったり登ったりの本当に厳しい難所である。

GPSで放山まで凡そ800m、600m、500m、そして300mと確実に近付いてはいるが、思うようには進まない。
目的地点まで100m・・・これからは、とまたもや小生がラッセル。ほぼ山頂付近だと思う。
が、その時、誰かがどうも熊がいるようだ!!熊の臭いがする!とんでもない話だ。
驚いて、最後の一発の爆竹に火を点ける。バン・バン・バン・・・笛を吹き、大声を上げる。勇気を出して進む。

ヤッター!放山の山頂

 

  50m、10m・・・ヤッター!やっとの思いで辿り着いた。放山の山頂、三角点だ。一同ほっとした。

 

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時刻は14時30分。ここからはシャルマン山頂まで道らしきものがある。
シャルマン山頂まで1.8㎞

シャルマン山頂まで1.8㎞だ。足を引きずりながら。一気に下山、誰も口をキカナイ!しゃべる元気も無いのだろう。
本当にしんどい。膝がガクガク、腿が痛い。
隊長以外は足を引きずりながらブナ林の中を進む。

 

シャルマン山頂着

 

シャルマン山頂はもうすぐ先に、あと100m、50m、10m、ついにシャルマン山頂に到着する。バンザ-イ!やった。やった。

 

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時は15時48分、生還したぞ!!火打シャルマン・ロードからの脱出だ!!
そこへ斉藤能生町観光協会長が缶ビールを持って迎えに来てくれた。
みんなでカンパーイ!夢にまで見た冷たいビールだ。本当にうまかった。
車で護送?され、柵口温泉・対岳荘で入浴。足の脛や腿のあちこちが擦り傷でヒリヒリ・ズキズキと痛む。
それでも安堵の気持ちで心地が良かった。

ビバークで夢見た山茶庵のラ―メン、餃子。旨い!今回の調査にて火打シャルマン・ロード
そしてツイン・ピークの名前をみんなで付けた。火打山~空沢山~放山~シャルマンまでの
登山道路が出来る日が何時か来ることを祈る!!
誰かが言った。また行こうか?・・・もう行くか!沈黙・・・。
伊藤隊員が言った。みんなも言った。もう二度と行きたくない!ハハハ・・・。

 

「後 記」

 

無謀な計画もチーム・ワークで成功

 

今回のこの無謀な計画は、小生が「言い出しっぺ」であり、青田浩氏に相談したところ、いいですよ。
やってみましょう。と即座に同意して、青田氏より伊藤信行氏、市川恵美子女史、朝比奈信男氏、の諸氏をいろんなルートで誘惑して実現したものです。
それにしても振り返ってみれば、天候にも恵まれ、結果として最高の条件が揃っていたのかも知れないと感謝している。
もし霧が出たり、雨が降ったりしたら、多分、もう一泊必要だったと思います。
青田浩氏の登山家としての優れた経験と行動力。伊藤信行さん、朝比奈信男さん、
市川恵美子さん各氏の計り知れない協力とチーム・ワーク。
自分一人が足を引っ張ってしまった様な気がする。
青田隊長さん、そして隊員の皆さんに心から感謝致します。
本当にありがとうございました。


以上